あなたのEコマースサイトも「選択のパラドックス」に悩まされていませんか?

By Angela Guido

マーケティングに携わる私たちは、お客様が選択肢を与えられることを望み、好むことは当然わかっています。実際、世の中のほとんどの人は「選択肢は多いほど幸せになれるものである」と考え、選択肢をポジティブなものとして捉えています。これはある意味事実であり、お客様も基本的に選択肢を求めるものですが、Eコマースサイトで無限の選択肢を提供しようとすると、結果的にビジネスの大きな妨げになることがある、というのはご存知でしょうか。

お客様は複数の選択肢を求める一方で、選択肢の数が多いと気後れしてしまい、結局なにも購入しない、またはなにか購入しても満足度に劣るという結果になりがちです。これは、物理的スペースによる在庫制約のないECサイトだからこそ最も陥りやすい、「選択のパラドックス」と呼ばれる現象です。RoktのCEOであるブルース・ブキャナンはポッドキャスト番組『Scaling Up』出演時に、なぜこの現象がオンラインビジネスの成長に悪影響を及ぼす大きな課題であるかを説明。「たいがいの企業は、より幅広い製品やサービスを提供すれば、その業界のトップになれると考えがちだが、消費者行動に目を向けるとなかなかそうはいかず、有力な企業は大体、全く逆のことをしようとしている」と述べています。

では、ECビジネスがそんな選択のパラドックスを回避・克服し、お客様の満足度を保ちながら売上を最大化するするためには、いったいどうしたら良いのでしょうか。その第一歩として、まず「選択のパラドックス」を引き起こす人間の心理を理解しましょう。ここでは、そのために私たちが知っておくべきポイントをまとめています。

「選択のパラドックス」とは?

選択のパラドックスがいかにあなたのビジネスに関係しているかを検討する前に、まずその要因となる心理と、私たち自身も日常の中で知らず知らずのうちに体験している現象であることを理解することが大切です。

NetflixやHulu、Amazon Primeといったストリーミングサービスを利用している人ならきっと誰でも、「観たい作品を探して、カタログ検索だけに何時間も費やしてしまった」なんて経験があるのではないでしょうか。今日はハッピーエンドの恋愛モノにするか、アクション満載のドラマにするか。映画か、シリーズ番組か。新作もいいし、以前観た作品のリピートも悪くないし。あれ、たしか面白いドキュメンタリー作品があったはず・・・。気がつくと、すでに丸1時間もNetflixのカタログページを彷徨っていた、なんてことも。結局それで疲れて、何も観ずに寝てしまったり、ウサ晴らしに適当な作品を選んでみたものの、もっとほかに観たい作品があるはずだと思うと、どうも満足できずイライラ・・・(←これぞ買って後悔したような心理)。このストレスの原因となっているのが、「選択のパラドックス」です。

選択肢を提供することは、もちろん悪いことではありません(たとえばNetflixが選択肢を2つしか提供できなければ、そもそも成功できません)。しかし、選択肢の幅と満足度には複雑な関係があり、選択肢を持つことが、限界効用逓減につながることも心得ておかなくてはいけません。私たち人間の満足感は、選択肢が一つ増えるたびに、少しまた少しと減少し、追加した選択肢の限界効用はいつか横ばいになるもの。また、「選択する」という行為にはそれなりに時間と労力を要されるため、選択肢が増えれば増えるほど、不安や後悔、過度の期待、優柔不断、疲労感といった問題にもつながるのです。

たとえば、あなたが歯みがき粉を買いたいとします。A店に入ると、棚にはありとあらゆる種類の歯みがき粉がずらり。すぐに買い終わると思っていたのに、予想以上の時間がかかり、イライラが募ります。一方、B店に並ぶ歯みがき粉は3ブランドのみ。あなたは躊躇することなく歯みがき粉を手に取り、購入を完了します。1種類のアイテムのために大きな棚を丸ごと使うのはスマートではないし、そもそもほとんどの実店舗ではそんなスペースはありません。しかし、これこそがE Cストアが陥りがちな危険なのです。アメリカの人気スーパー「Trader Joe’s」は、B店がいかに成功しているかを示す適例です。Trader Joe’sは競合のWhole Foodsと比べ、1平方フィートあたり2倍の売上を実現しています。その秘訣はまさに「選択のパラドックス」への理解と配慮にあります。『Business Insider』の販売戦略レポートによると、Trader Joe’sが取り扱うパスタソースの選択肢は平均14種類であるのに対し、競合店では144種類となっています。Trader Joe’sは、少ない選択肢を提供することで、買い物客の思考・集中力を意思決定プロセスではなく、購買プロセスへと促しているのです。 

ECサイトで見られる選択のパラドックス

実店舗では、物理的スペースによって取り扱える商品の数が必然的に限られるものの、オンラインショップではその何十倍もの商品を陳列することができます。スペース制限のないデジタル空間だからこそ、多くのEコマースサイトが選択肢のパラドックスに悩まされているわけです。また、そういったリテールサイトが無数の選択肢を提供するがため、消費者はページスクロールに時間を取られ、結果的にストレスや気後れを感じて、購入を諦めてしまいがちです。

世界最大のE CサイトであるAmazonを例に挙げてみましょう。膨大な数の商品を取り扱うAmazonでは、選択肢のパラドックスを配慮し特別な対策を行なっています。商品を各種条件で絞り込み、1ページに表示する選択肢を少なめに制限した上、類似性の高い商品だけを提示することでページをすっきりとシンプルに保っています。つまり、頻繁にAmazonを利用する人でも、同社が取り扱う全商品数のほんの一部しか目にしていない可能性が高いわけです。しかしこれは単なる偶然ではなく、買い物客が膨大な選択肢に圧倒されないようにするための、戦略的なわざなのです。

また、メニューやボタンが多いウェブサイトも、ユーザーの心理的苦痛・混乱を引き起こしがち。写真や色、選択肢の過多により、目的に対するユーザーの集中力を低下させる結果となります。一般的なECサイトの中で、選択のパラドックスによる影響が最も懸念される主なエリアは、ホームページ、買い物カゴ(カート)、購入確認ページの3つ。この3つのエリアを上手に活用することで、サイトを最適化し、お客様のエンゲージメントと価値を最大化する方法を以下でご紹介します。

ホームページ 

訪れたユーザーに、サイトをできるだけ長時間を楽しんでもらいたいと思うのは当然のこと。ユーザーにアピールすべく、いくつものボタンを備えたり、カラフルな画像やアニメーションを取り入れたりするサイトも少なくありません。しかし、実はそれがユーザーを混乱させ、逆効果になっていることも。

  1. シンプルさを重視 – 視覚的に複雑なサイトは、シンプルなサイトに比べて一般的に効果や美しさが劣ると評価されています。UXをシンプルにすることで、お客様のサイト体験が大きく向上します。
  2. CTAは少なめに – CTAボタンが多すぎるとお買い物のフローの妨げとなり、コンバージョン率の低下につながります。EコマースサイトではCTAの数を極力減らし、お客様に最適なCTAだけに絞り込むことをお勧めします。

買い物カゴ(カート)

買い物カゴ(カート)は、お客様に最も負担をかけたくないページです。このページに製品のアップセルや会員プログラム、アプリのインストールキャンペーンなどを詰め込んでしまうリテールサイトも多いですが、これは逆効果。カゴ落ち(カート放棄)率を一気に高める要因です。

調査によると、なんと平均69.57%の消費者がオンライン購入完了前にカゴ落ちしているという結果もあり、購入を検討中のお客様の39%が、購入手続きのプロセスが面倒になりカート放棄しているそう。この原因となっているのは、ほかでもない決定麻痺です。

  1. オファー・製品・サービスはパーソナライズする – チェックアウト(購入手続き)の際のエンゲージメントチャンスは限られているため、パーソナライズされたオファー・製品・サービスのみを表示し、お客様のショッピング体験を向上させるのがベスト。購入手続きページはシンプルかつ、お客様への関連性を保つことがカギとなります。
  2. 購入・お支払いページはシンプルに – 購入手続きの際にお客様が気後れしてしまうと、カゴ落ちしがちです。これを回避するためには、無駄を抑え重要な情報だけを提供することでスムーズな流れを作り、このページを上手に利用して価値とエンゲージメントを高めましょう。 

購入確認ページ 

Eコマースサイトでは見過ごされやすいものの、ブランドにとってこれまでにないチャンスを与えてくれるのが、購入確認ページです。調査によると、消費者の心理はオンラインでのお買い物を完了した直後、購入確認ページでの満足度が最も高く、この段階で目にする関連オファーでエンゲージメントを起こす可能性は最大7倍になることがわかっています。

しかし、このページを活用しきれていない企業は多く、何も表示せずに機会損失したり、反対にいろいろと表示してユーザー離れを促してしまったり、もしくはパーソナライズせず、お客様に関連性のない固定選択肢を表示してしまったり、といったサイトが多いのが現状です。

このページの潜在価値を引き出し、選択のパラドックスを防ぐには、ここでお客様に最も適したオファーを3つパーソナライズして提示することをお勧めします。

選択のパラドックスを克服する、ROKTのソリューション

Roktでは、お客様ひとりひとりに適した「正しい」選択肢を提示することで、ECサイトが選択のパラドックスに侵されないよう企業サポートを行っています。Rokt独自の業界受賞歴を誇るAIが、賢いデータ収集と目的管理により、お客様のコンバージョン率が最も高いタイミングで、最も関連性の高いメッセージを発信。関連性のないオファーや製品、サービスによるお客様離れを防ぎます。

一方的なチョイスを数々表示して「どれをお求めですか」と尋ねるのではなく、お客様ごとにパーソナライズされた選択肢を厳選して提示。選択のパラドックス対策としてオファーを制限するからには、ハワイにいるお客様に冬物のコートをおすすめしたり、アプリをダウンロード済みのお客様にアプリインストールのプロモーションを発信したりといった、機会損失は絶対に避けたいもの。優良なオンラインショップは、単に注目度の高いオファーや製品、サービスを提示するだけでなく、そういったメッセージを個々にパーソナライズすることで、より高いエンゲージメントと、より高い顧客満足度、そして長期的なファン獲得を実現しているのです。

Roktでは選択のパラドックスを克服し、ECサイトを最適化するための効果的なソリューションをご案内しております。今すぐデモのお申し込み、またはSolutions@rokt.comまでメールでお問い合わせください。