顧客価値と収益の向上を可能にする総合的指標、バリュー・パー・トランザクション(VPT)とは

By James Voltz

現代的なEC事業者であれば今や誰もが、多様なマーケティング戦略を用いてお客様ひとりひとりにベストな顧客体験を提供し、最大の顧客価値を引き出そうと努めていることでしょう。Roktでは、企業の全容を把握し、事業パフォーマンス全体を最適化するためには、そういったさまざまな戦略プランを包括的に導く総合的指標を定めることが重要であると考えています。EC企業のマーケティング部では、キャンペーン効果の測定に際し顧客単価(ATV)が重視されがちですが、今日この数値だけでは不十分なことがほとんどです。お客様の購買フローに潜む収益増加の可能性を最適化・最大化するには、客単価だけでは見通すことのできない付加価値を考慮した「バリュー・パー・トランザクション(Value Per Transaction、VPT)」がより有効な指標となります。

顧客単価には盲点がある 

客単価(ATV)は、売上総額を取引回数または販売回数で割って算出されます。

ATV = 売上総額÷取引(販売)回数

業績指標としてある程度有意義ではありますが、外れ値によって簡単に数値が変動してしまうため、データとして誤解を招きやすいことも事実です。極端に高額または低額の注文が発生すると、データセット全体に影響が出るため、幅広い価格帯の商品を取り扱っている場合は特に注意が必要です。例えば、一日に5ドルの商品を購入したお客様が9人、200ドルの商品を購入したお客様が1人いた場合、この日のATVは25ドルとなります。しかしこの数字を見ているだけでは、事業の全貌も、売上に関する正確なイメージも把握できません。

ATVの算出には、お客様の個性や多様なデータポイントは反映されません。つまり、異なるお客様を単純な人数(=同等の数値)として扱うことで、顧客関係における長期的な利益創出のチャンスを逃しているのです。多様なお客様をよりよく理解するためには、視野の限られた売上平均値だけに頼るのではなく、顧客生涯価値や副次的収益の可能性といったさまざまな顧客価値の要素に目を向けることが重要です。

ATVはキャンペーンの最適化にとって大切なデータではありますが、商品やサービスの価値と結果だけを捉えた数値であるため、全体的な事業パフォーマンスの測定指標とするにはもはや不十分なのです。

ECエクスペリエンスに潜む価値要素を知ろう

Roktが重視する「バリュー・パー・トランザクション(VPT)」は、生涯価値、平均注文額、付随収益といった複数の価値要素を考慮することで、ATVの誤差を補い、マーケティング戦略の効果をより明確に、より包括的に可視化します。

生涯価値(Lifetime Value、LTV)は、1人のお客様が企業にとってどれだけの価値があるかを捉える数値で、そのお客様の顧客ライフサイクル全期間を視野に入れます。事業に対するそのお客様の価値に平均顧客寿命を掛けて算出され、ライフサイクルの中でそのお客様からどれだけの収益が期待できるかを示します。既存のお客様の価値を高めることは、長期的成長を促す効果的な手段です。会員プログラムやパーソナライズされたオファー、お友達紹介特典、お買い物ポイントをはじめ、魅力的なコンテンツを活用して顧客関係を強化し、生涯価値を高めましょう。

例えば、ジェニーさんがオンラインショップで5ドルの商品を購入するとします。通常はそれがATVに加算されて完了となりますが、もし購入手続きの際にこのショップの会員プログラム登録を促すメッセージが表示されていたらどうでしょうか。5ドルの購入額(とATVの数値)は変わらずとも、よりたくさん、より頻繁にお買い物をするインセンティブを得たジェニーさんは、リピート客となる可能性が高まり、顧客生涯価値がアップします。LTVはこのように、初回購入以降のお客様の価値を検討する指標で、お客様の潜在的な可能性を最大限に引き出すためには、業績評価に必ず取り入れるべき重要な要素です。

平均注文額(Average Order Value、AOV) は、一人のお客様がお買い物の際に費やす平均金額を表す数値です。適切なオファーでこの数値を増加させることが、企業の収益アップにつながります。AOVの引き上げは多くの企業にとって、顧客獲得コストの相殺と投資収益率(ROI)の向上を意味し、収益性の促進と、製品開発・広告・人材へ向けたさらなる資金投入を通して、長期的な企業成長を可能にします。製品補償や保険、駐車場、レンタカー、ギフトカード、関連商品といった付加製品・サービスの販促キャンペーンや、VIPサービス、無料配送・手荷物サービス、優先チェックインなどのアップセルは、どれも平均注文額の向上に大変有効な手段です。

副次的収益,とは、企業が主要製品以外の商品やサービスから得る収入を指し、収益向上を目指すにあたって必ず検討すべき要素です。副次的収益は、クレジットカード会社とのマイレージ提携や、ホテル提携によるコミッションなど、特に航空会社の間で顕著な増益手段です。また、旅行業界は特に、アップセルによる副次的収益の開拓を得意としています。旅行業界で使われている洗練されたECマーケティング戦略を、グローバル企業の見識を交えてまとめたRoktの最新資料「アップセル解剖学—旅行業界におけるトランザクションモーメントの活用術」もぜひご覧ください。

どんな事業にとっても、増益源として大変有効であるはずの副次的収益ですが、これを活用できている企業はまだまだ少ないようです。航空業界以外では、スポーツイベントでのグッズ販売、ガソリンスタンドでの洗車サービス、取り付け・設置サービスを提供する電化製品店なども、副次的収益を可能にしている事業例です。Eコマースにおいては、電子機器や大型家具の補償サービスや、商品配送サービスを提供する小売業者、チケット購入時にキャンセル保険を提供するエンターテインメント関連業者などが挙げられます。企業にとって、収益源を多様化してくれる副次的収益の重要性は見逃せません。お客様一人あたりの売上額と顧客維持率を高めながら、リピート客の増加を図り、総収益アップを可能にするという、貴重な要素です。EC企業は戦略的なパートナーシップの構築と、トランザクションモーメント™でのオファー内容の最適化によって、副次的収益の機会を活用しましょう。

すべての価値要素を統合するVPT 

平均値の算出だけに頼るのではなく、さまざまな増益チャンスや価値要素を視野に入れることの大切さがこれでお分かりいただけたでしょうか。バリュー・パー・トランザクション(VPT)は、こうした複数の価値要素をひとつひとつ検討することで、サイト利用者に関するよりクリアな顧客像を示す総合的指標です。言い換えれば、VPTを活用することで、企業は顧客体験における潜在的な増益チャンスを最大限に引き出すことができるというわけです。また、購買時におけるお客様の実際値を把握することは、内部および外部のマーケティング目標や、お客様ごとの短期的・長期的価値を比較検討するにあたって不可欠だと言えるでしょう。

トランザクションの最適化とパーソナライゼーション – ROKT式ソリューション

近年、見込み客の開拓からカスタマージャーニーの最適化、コンバージョンへ向けた顧客育成(ナーチャリング)まで、EC企業の顧客戦略をサポートするソフトウェアプロバイダーは数多く存在しますが、そのほとんどが、お客様が購入に辿り着いた時点で最適化が完了したものと考えています。しかしRoktでは、「トランザクション」つまり、その購入手続きのアクションを最も重視しているため、VPTを積極的に算出し、時に相反するさまざまな企業目標もすべてVPTを統一的指標とすることで、効果的に最適化を遂行。お客様ひとりひとりに向けて顧客体験を丁寧にパーソナライズし、トランザクションのタイミングでより多くの価値を引き出すためのお手伝いをしています。カートの中身やお客様の属性(デモグラフィック、過去のアクセス履歴、購買行動など)に基づいて、ユーザー体験をダイナミックに調整することで、それぞれのお客様に向けてサイトの魅力を最大化。提示するオファー内容はもとより、デザイン要素やコピーの言葉づかい、オファーの価格や販促タイプを、お客様が最もエンゲージを起こしやすいと見込まれる形で戦略的に最適化することで、VPTを向上させています。

すでにRoktをご利用の企業は、複数のマーケティング戦略を包括する洗練された総合的指標としてVPTを活用することで、全体的な事業パフォーマンスを最適化し、トランザクションモーメント™におけるお客様ひとりひとりの価値とエクスペリエンスの最大化を実現しています。

この情報のまとめは、こちらの資料でもご覧いただけます。

Roktでは、ECサイトのバリュー・パー・トランザクション(VPT)を戦略的に向上させるソリューションをご案内しています。詳しくは今すぐSolutions@rokt.comへメールでお問い合わせになるか、こちらからデモをお申し込みください。