Eコマースの未来を読み解く、今注目の業界傾向

By Angela Guido

その誕生以来、リテール業界にさまざまな革命を引き起こしてきたEコマース。昨年EC業界は爆発的なブームを迎え、パンデミック絶頂期にはわずか90日間で10年相当の成長を遂げたと言われています1。2020年、Eコマースの世界収益は前年比約3割増となる4兆ドルに到達2し、この右上がり成長は今後も数年間続くと予測されています。また、小売ECサイトに至っては、2024年までに世界合計収益6兆ドルに達し3、小売業界の全体売上における割合は2020年の18%を超え、22%まで成長すると推定されています。

こうした前代未聞の成長は一時的なブームではなく、今後も継続するものだと考えて良さそうです。コロナ禍でEコマースの世界が大きく変わったように、新たな時代の流れと共に変遷を続けていくのがこの業界の特徴でもあります。パンデミックの影響により、世の中にデジタルトランスフォーメーションの波と消費者行動の大きな変化が訪れ、さまざまな企業が新たな課題に直面することとなった昨今。EC事業者は今こそ、この高度成長を維持する方法を学び、これから生まれてくる新たな業界傾向に対応する術を身につけなくてはなりません。ここでは、Eコマースの未来に備えるためにEC事業者が知っておくべきポイントをおさらいします。

変わりゆく消費者市場

世界で初めてオンライン通信販売が行われたのは1995年。Amazon.comで1冊の本が売れたことから始まりました。以来、多くの変遷を遂げながら長い道のりを歩んできたEコマース市場ですが、その勢いはまだまだ衰えを知らず、ポストコロナの時代に突入しても、更なる変貌を遂げるであろうと予測されています。では、そんな変わりゆくEC市場において、私たちは何を心得ておくべきなのでしょうか。

<世界的拡大を伴う記録的な一年>

経済活動が世界的に鈍化する中、新型コロナウイルスの影響により、急速なEコマースの成長と大きなデジタルトランスフォーメーションを迎えた世の中。ロックダウンが新たな常識となったことで、ビジネスも消費者もさらなるデジタル化を進め、より多くの商品・サービスをオンラインで提供・購入するようになりました。その結果、2019年時点ではたった14%だった世界小売業界の全体規模におけるEコマースの割合は、2020年に約18%まで増加4。現在15%とされているEコマースの世界普及率も、2025年には25%まで増加すると予想されています。コロナ禍のアメリカでは、わずか3カ月間で10年相当の成長を見せたEコマース。その普及率は2019年に13%だったのに対し、2021年第1四半期には30%以上に上昇しました5。また、米政府による景気刺激策やワクチン接種がEC市場の急成長をさらに後押しし、今年3月の売上は過去最高を記録しました6

<モバイルユーザーへの対応準備

コロナ禍で消費者のスマートフォン使用時間がこれまで以上に長くなったことで、2020年のアメリカではモバイル端末によるEC売上が31.5%増加し7、今年は28.8%まで上昇すると見込まれています。また、アメリカのモバイルEC収益は2022年までに4,320億ドルを超え、Eコマース全体売上の54%を占めるであろうとも予想されています8。こうしたモバイルショッピングの台頭は、今後消費者にとって「Mコマース」が次なる買い物のかたちとなるであろうことを示唆しています。つまり、EC事業者にとって、今やモバイルフレンドリーなサイト構築は必須であり、モバイルUXとモバイル決済オプションへの投資がますます重要となることが伺えます。

<B2Bの成長に欠かせないバーチャルテクノロジーに投資>

パンデミックがプラスの影響となったのは、消費者向けEコマースだけではありません。B2B事業のEコマースもこの間に大きな成長を見せ、2021年、B2Bの世界EC収益は1.1兆ドルに達する9と見込まれています。この成長を裏付ける大きな要因は、デジタルコマース向け販売チャネルの需要が増えたことです。コロナ禍で流通施設をはじめとする従来の販売チャネルが閉鎖されたことにより、B2Bバイヤーの75%が、オンラインによる仕入れやリモートでの商談を好んでいることが明らかになりました10。そういった流れからも、B2B事業におけるEコマースは今後ますます活発化するであろうことが予想されます。そのため事業者は、CRMをはじめとするリモートでの営業管理用技術はもとより、AIで主力営業手段を特定するGongのようなテクノロジーへ向けた投資強化にも取り組むべきでしょう。

変わりゆく消費者像

コロナ感染対策の主要手段としてソーシャルディスタンスが日常化されたことにより、消費者はそれぞれ、自らの買い物習慣を見直さざるを得なくなりました。その結果、Eコマース市場ではあらゆる業界で新しい顧客層と顧客行動、そして顧客からの新たな期待が伺えるようになりました。

<高齢者のオンライン化による顧客層の変化>

新型コロナの影響で顕著になった最も重要かつ予想外の変化といえば、60代、70代、80代の消費者層が驚くほど速やかにネット通販を利用し始めたことでしょう。65歳以上の消費者によるオンラインストアでの購入額平均は、この1月〜10月までの間で前年比49%増の合計1,615ドルを記録し、購入頻度も40%以上増加。ネット通販利用者の中で、近年最も急増した客層となっています。コロナ感染による合併症のリスクが高いとされる高齢者にとって、必要から生まれた動向ではありますが、専門家によると、この傾向はパンデミック終息後も数年間は続くと予想されています。新しい顧客層が生まれ、この先も健在すると見込まれているからには、EC企業はもちろん適応準備を始めなくてはなりません。これまで少数派だったこの新たなお客様層にアピールするには、マーケティング戦略の見直しが必要となるほか、この層に向けたメッセージと顧客体験のパーソナライゼーションで、長期的なロイヤリティ構築を図ることが大切です。

<顧客行動の変化:新たな製品への欲求>

これまでEコマースといえば、ガジェットやファッション通販が主流となっていましたが、近年消費者は食料品や健康・衛生用品から、家具、自動車の部品といったものまで、新型コロナウイルス流行以前はあまりネットで購入することのなかったジャンルの商品を買い求めるようになっています。エンターテインメントから生活必需品、食品・飲料、そして新製品への欲求まで、Eコマースに対する消費者のニーズがコロナ禍で高まったことが伺えます。また、デジタルメディアやエンターテイメント、教育、ソフトウェア、食品、消費財については、無料トライアルや新規サブスクリプションが急速な伸びを見せています。特に、新規サブスクリプション件数は、パンデミック勃発後最初の数週間で一気に増加し、コロナ以前と比べ20~40%高い伸び率12を示しました。サブスクリプションモデルへの転換傾向は今後数年続くと予想され、この分野にすでに参入しているブランドや、今後開拓を検討しているブランドにとって、大きな機会となるとされています。サブスク型製品は、定期的にリピート収益が発生するため、お客様をサブスクライバーに変えることで、継続的な売上とより深い顧客関係の成長が期待できます。言い換えるなら、サブスクリプションモデルへの移行を検討している企業にとって、今まさにベストなタイミングが訪れたと言って良いでしょう。

<お客様の新たな期待:鍵となるのはパーソナライゼーションと利便性>

デジタル社会の黎明期以来、オンラインストアがかつてない賑わいをみせている昨今ですが、それに伴って、消費者がより高いデジタル体験を求めるようになっていることも見逃せません。最近発表されたフォレスター・リサーチ社の調査では、消費者の79%がブランドに対し「購買体験をよりシンプルかつ迅速にすること」を求めているほか、64%は「よりスムーズな体験を提供するために、テクノロジーに投資する」ことを期待していることがわかっています。また、別のレポートでは、消費者の過半数が「パーソナライズされた割引オファーと引き換えに、自分が気に入った商品に関する情報をシェアしても良い」と答えています13。さらに78%は、パンデミック前よりも利便性を重視する傾向にあり14、その内約90%が「意思決定のしやすい円滑で柔軟な支払い方法を提供してくれるサイトでは、より多額の購入をする」と回答しています。パンデミックによって、消費者は利便性やパーソナライゼーション、即時性といった要素を重視するようになっているため、EC事業者はそういったニーズに応じた予算計画と投資を行う必要があります。

変わりゆくテクノロジー

テクノロジーによって誕生し、成長してきたEコマース。現在も相変わらず、テクノロジーがEC業界を支える駆動力となっていることは言うまでもありません。また、テクノロジーの進化に伴い、消費者とオンライン事業者それぞれにとっての可能性も広がっています。今、新たなテクノロジーによって、私たちのEコマースの使い方が変わろうとしています。従来のオンライン購入手続きの流れを、購入前・購入時・購入後を含む、ダイナミックな顧客コミュニケーションの機会に変える新たな技術に着目しましょう。

<購入前のテクノロジー>

現在、急成長している購入前(プリパーチェス)ECテクノロジーの代表例に、チャットボットが挙げられます。チャットボットは、あらかじめ設定された条件、トリガーおよびイベントに基づいて、お客様対応を自動的にシミュレートするプログラムで、2024年までに世界で13億ドルを超える市場規模が予測されています15。また、2021年までに8割の企業が何かしらのかたちでチャットボットを導入する16と見込まれており、今後チャットボットがビジネスコミュニケーションの主力となっていくことが予想されます。

また、ロックダウン中に飛躍的に成長したライブコマースも、コロナ禍で生まれた新たなトレンドの一つです。これは、製品やサービスをライブ配信で紹介しながら視聴者とのエンゲージメントを図るテクノロジーで、PopShopShopShopsといったプラットフォームを通して、消費者はその場で欲しい商品をクリックし、購入できるようになりました。特に中国では、ライブコマースがすでに大きな現象となっており、昨年の売上は1,000億ドル以上であったと推定されています17

<購入手続き中のテクノロジー>

Eコマース上で最も重要なステップであると言っても過言ではない、購入手続きページ。しかし、お客様の7割がこのページで離脱している18ことはご存知でしょうか。世界で4兆ドル相当の機会損失につながっている19とされる「カゴ落ち」は、EC事業者にとって大きな課題です。お客様の購入体験にとって、スピード、利便性、パーソナライゼーションは欠かせません。そのソリューションの一つとして、ワンクリックで安全な支払い・購入を可能にするテクノロジー製品が急速に普及し始めています。モバイルウォレットと呼ばれる電子マネー決済システムは、企業にとって、もはや単なるオプションではありません。2017年時点で3兆4,000億ドルだったデジタル決済総額は、2021年には6.6兆ドルに達すると推定されており20、わずか4年で倍増する見込みです。

また、分散型コマースを支える技術も今後さらに顕著になると考えられます。これは、消費者がわざわざ別のページやウィンドウ、タブに移動しなくても、閲覧中のコンテンツから直接商品を購入できるようにする技術です。EC企業はこのテクノロジーを活用して戦略的なパートナー提携を行うことで、新たな収益源を創出すると同時に顧客体験の向上を図ることができます。しかし、ここで要となるのは、ユーザーそれぞれのエクスペリエンスを向上させるため、お客様ひとりひとりに合わせてパーソナライズするための機能です。ある調査では、消費者の80%が、「ブランドがパーソナライズされた体験を提供してくれると、買い物をする可能性が高まる」と報告しています21。テクノロジーの進歩、特に人工知能と機械学習がより身近になったことで、こうした丁寧なパーソナライゼーションがますます実現しやすくなっています。AIはユーザーデータを迅速に解析し、損失の可能性を合理的に管理することができるため、ECブランドにとって必要不可欠な、リアルタイムの最適化とスケーラビリティ(拡張性向上)を可能にしてくれます。

<購入後のテクノロジー>

購入手続き完了後にも、お客様とのさらなるエンゲージメント、およびブランドロイヤルティ構築に活用すべき貴重なチャンスが残っています。購入後(ポストパーチェス)の顧客対応は大変重要であり、消費者の84%は「高額な買い物をした際は、特に購入後のコミュニケーションが必須である」と考えています。購入完了後のコミュニケーションは、依然としてEメールが主流ですが、21才~29才の消費者層の消費者層に関しては、43%がストアからのメッセージをSMSで、33%はプッシュ通知で受け取りたいと望んでいます22。消費者がメッセンジャーアプリのようなコミュニケーションチャネルを日常的に使うようになれば、自分に関連性のある便利な情報を、そういったチャネルを通して受け取りたいと思い始めるのも納得です。

さらに、購入後の確認ページは、Eコマースブランドにとって、お客様体験を向上させながら新たな収益源を生み出すことのできる貴重な機会でもあります。お客様が購入完了した直後に、関連性のある他社広告(または自社オファー)を提示することで、顧客関係を一層と深めながら、さらなる収益を引き出すことができるのです。

今後の展望 

誕生以来、刻々と様相を変えてきたEコマース。1995年、Amazonが1冊の本を販売し、eBayが世界初のグローバルマーケットプレイスとしてデビューして以来、オンライン通販という新しい市場のとびらが開き、企業も消費者も止まることなく前進を続けてきました。インターネット、そしてパソコンやスマートフォンといったハードウェアも、時と共に進歩し、Eコマースの急激な発展に貢献してきました。

また、COVID-19はEコマース界を大きく揺るがし、デジタルおよびEコマース産業に、思いもよらぬ成長をもたらしました。オンライン小売業界の全体売上は今、2023年までに1兆ドルに到達すると予測されています。2020年度はほんの18%だったオンライン市場の全体シェアも、2025年には27%、2030年には33%まで成長すると予測されています23

Eコマースが成長と変化を続ける中、オンライン小売業者にとって最も注目すべきトレンドは、モバイルコマースとパーソナライゼーションであることは間違いありません。企業のあらゆるソリューションにおいて、中心となるべき存在はお客様です。つまり、お客様が積極的に訪れる場所(=モバイル端末)で、利便性、信頼性と効率性を構築し、それぞれのお客様に適した体験を提供することが、現在、そして今後も、Eコマースにおける成功の鍵となるはずです。

こうして大きな発展を遂げてきたEコマース業界。消費者向け技術とバックエンド技術への投資、そして継続的な進歩への適応能力が、今後Eコマースで成功するためのキーポイントとなっていることは明らかです。


参考文献・引用

1 https://www.mckinsey.com/business-functions/strategy-and-corporate-finance/our-insights/five-fifty-the-quickening#

https://www.mediaplaynews.com/report-global-ecommerce-reached-4-trillion-in-2020/#:~:text=Despite%20a%20challenging%202020%20for,reach%20%245%20trillion%20in%202022. 

3https://www.emarketer.com/content/worldwide-ecommerce-will-approach-5-trillion-this-year 

4https://unctad.org/news/how-covid-19-triggered-digital-and-e-commerce-turning-point 

5https://www.emarketer.com/content/us-ecommerce-growth-jumps-more-than-30-accelerating-online-shopping-shift-by-nearly-2-years

6https://www.digitalcommerce360.com/article/quarterly-online-sales/ 

7https://www.statista.com/topics/1185/mobile-commerce/ 

Big Commerce, mobile 

9https://www.bigcommerce.com/articles/ecommerce/ecommerce-trends/#14-ecommerce-trends-leading-the-way 

10https://www.mckinsey.com/business-functions/marketing-and-sales/our-insights/these-eight-charts-show-how-covid-19-has-changed-b2b-sales-forever 

11https://www.washingtonpost.com/road-to-recovery/2021/01/21/baby-boombers-online-shopping-pandemic/ 

12https://recurly.com/research/pandemic-impact-subscription-growth-rates/ 

13 Retail Touch Points 

14https://www.linnworks.com/whitepaper-access/the-effortless-economy-a-new-age-of-retail

15 Intellectyx chatbot statistics 

16Outgrow chatbox statistics

17https://coresight.com/research/insights-from-china-opportunities-in-chinas-63-billion-livestreaming-e-commerce-market/ 

18https://baymard.com/lists/cart-abandonment-rate 

19https://phys.org/news/2019-10-abandoned-carts-trillion-dollar.html 

20https://www.finaria.it/pr/digital-payments-to-hit-6-6t-value-in-2021-a-40-jump-in-two-years/ 

21https://www.epsilon.com/us/about-us/pressroom/new-epsilon-research-indicates-80-of-consumers-are-more-likely-to-make-a-purchase-when-brands-offer-personalized-experiences 

22https://see.narvar.com/consumer-report-bots-texts-voice.html 

23https://www.fticonsulting.com/insights/reports/covid-19-2020-online-retail-forecast-report 

Rokt